展覧会案内高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの

高畑勲展

─日本のアニメーションに遺したもの


「火垂るの墓」色指定
©野坂昭如/新潮社,1988




東京国立近代美術館

東京都千代田区北の丸公園3-1
tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
2019年7月2日(火)〜2019年10月6日(日)
※月曜休館。ただし9/16・23は開館し、9/17(火)・24日(火)休館
10:00~17:00
※金曜・土曜は21:00まで
※いずれも入館は閉館の30分前まで
観覧料(当日):一般1,500円 大学生1,100円 高校生600円 中学生以下無料
※団体割引あり

公式HP:https://takahata-ten.jp/

→ チケットプレゼント *受付は終了しました

「アルプスの少女ハイジ」、「母をたずねて三千里」、「赤毛のアン」、「火垂るの墓」、「かぐや姫の物語」──多くの人が一度は見たことがあるアニメーションの数々だ。

それらを生み出した稀代のアニメーション監督・高畑勲の軌跡を追う展覧会が、東京国立近代美術館にて開催中だ。

初の長編演出(監督)となった「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968年)で、悪魔と闘う人々の団結という困難な主題に挑戦した高畑は、その後つぎつぎにアニメーションにおける新しい表現を開拓していく。70年代には、「アルプスの少女ハイジ」(1974年)、「赤毛のアン」(1979年)などのTV名作シリーズで、日常生活を丹念に描き出す手法を通して、冒険ファンタジーとは異なる豊かな人間ドラマの形を完成させていく。

80年代に入ると舞台を日本に移して、「じゃり子チエ」(1981年)、「セロ弾きのゴーシュ」(1982年)、「火垂るの墓」(1988年)など、日本の風土や庶民生活のリアリティーを表現するとともに、日本人の戦中・戦後の歴史を再考するようなスケールの大きな作品を制作。遺作となった「かぐや姫の物語」(2013年)ではデジタル技術を駆使して手描きの線を活かした水彩画風の描法に挑み、従来のセル様式とは一線を画した表現上の革新を達成した。

このように常に今日的なテーマを模索し、それにふさわしい新しい表現方法を徹底して追求した革新者・高畑の創造の軌跡は、戦後の日本のアニメーションの礎を築くとともに、他の制作者にも大きな影響を与えてきた。本展覧会では、絵を描かない高畑の「演出」というポイントに注目し、多数の未公開資料も紹介しながら、その多面的な作品世界の秘密に迫る。

2018年4月に惜しくも他界した高畑勲。見るものを引き込む、気迫に満ちたその仕事を堪能したあとは、ぜひ彼の生み出したアニメーションを鑑賞してほしい。きっと新たな想いが去来することだろう。